FatasyDesire~ファンタジー・ディザイア~
「したしい人にはこうして愛情を示すんだって、言っていたわ」
"親しい人"、そう聞いて今にも溢れ出しそうな殺気がふっと和らいだ。
なんとも単純な男である。
「……そう。でも俺は"親しい"っていう狭い枠に分類されるんだ」
一見悲しそうな台詞に聞こえはするが、この男の顔は微笑んでいる。
しかし純粋なキリエは勘違いをして慌てて否定する。
「違うよっ。クレドはもっともっと大きいの! 世界で一番大好きだもん!」
クレドの想像を軽く超える大きな回答に、煽ったクレド自身が呆気に取られる。
半分は冗談、半分はどう思っているのか聞きたくて。
それなのに返ってきた言葉は彼を最高潮にもさせるような言葉だった。
まさか世界で一番という言葉が返ってくるとは予想もしていなかったのだ。
至って真剣な顔をする彼女は、じっとクレドを見上げている。
濁りのない綺麗な瞳に、他人にはわからないクレドのほんの少しだけ照れているような顔が写る。
「お前は優しいな。俺も、世界にキリエだけがいれば、それで良い」
「世界にわたしたち二人だけなんて、さびしいよ」
「そう? 俺はそれで充分だけど」
キリエは困ったように笑うと、クレドの首から腕を離して二人でテーブルに移動した。
相変わらずキリエの好物ばかりが並んでいる。
本来食べることが大好きな彼女は目が覚めて二日目だが、既に彼の手料理が楽しみになっていた。
美味しそうに食べるキリエをじっと見ながら、クレドはテーブルに頬杖をついて口を開いた。
クレドはキリエが口にした"ギル"が気になったが、嬉しそうに料理を見ている彼女を見ると、それに水を差すような真似はしたくないと思ったので聞くのは止めた。
きっと男だと彼女から直接聞いてしまうと、この穏やかな雰囲気に亀裂が走りそうな気がするから。
「クレドの料理はおいしいね。わたし、好きよ」
変わらずフォークで食べているキリエは嬉しそうな笑う。
「キリエが喜んでくれるなら、俺も作り甲斐があるよ」
彼女が喜んでくれて、趣味にしていて良かったと心底感じるクレド。
「キリエ、明日から俺が家にいなくても、平気?」
フォークを使って食べていた小さな手が、ピタリと止まる。
「え……どうして?」
明らかな不安を滲ませた表情をするキリエ。
「うん。まあ、仕事詰まってるんだ。でも、キリエが嫌なら此処にいるよ」
キリエを自宅に引き取ってから4日が経つ。
毎日毎日客を取っていたクレドは、いつも休日なんてない勢いのスケジュールだ。
それが4日も空けてしまうと、キャンセルをした客へのご機嫌取りもいろいろと雑務のような仕事が増えてしまう。
結局はキリエとの時間が更に減ってしまうことにも繋がる。
自分が思っていたよりもキリエは元気だし、この分だと家を空けても大丈夫だと思ったのだ。
「……」
しかし黙り込んでしまったキリエを見て、クレドは少しだけ困った顔をする。
「ごめんな。まだ不安だよな。此処に」
「だ、大丈夫! わたしなら、平気だよ!」
キリエは面倒見の良い幼馴染みの優しい返事を期待していたが、実際そう言われてしまうと自分の我が侭に嫌悪し、慌ててそう言った。
「……本当に? 無理してない?」
いくら慌ててキリエが否定しようがクレドが気付くのは当たり前で。
「うん、ホントだよ。わたしならちゃんとお留守番してるよ」
昔の彼女ならば"嫌なものは嫌"、"したくないものはしない"が当たり前で、こんなに聞き分けの良い返事はしなかった。
いい子のふりをしているのだろうか、そう考えてクレドはじっとこちらを見る翡翠の瞳を見返す。
「いいよ、無理しなくて。いくら家の中だからって、フォレストで一人は怖いに決まってる」
何処までも彼女を甘やかしたい彼は、虫歯が出来そうな甘い笑顔でそう言う。
キリエが自分と一緒にいたいと、そう願ってくれるならば傍にいたい。
ところがキリエはふるふると首を横に振る。
「お仕事たいへんなんでしょ。わたしなら大丈夫だよ。いい子で待ってるから」
「けど、」
「大丈夫! 家で大人しくしてる!」
さっきまでは不安そうにしていた癖に、次は頑として意見を譲らないようだ。
クレドは仕方なく溜め息をつき、「わかった」と頷く。
キリエが大丈夫だと言ってくれれば、クレドもクレドで仕事を消化できるから有り難いことではある。
もちろんキリエを一人にする限り心配ではあるが。
「ねえ、クレドは一体どんなお仕事してるの?」
クレドが"仕事"をしていることが物珍しいのか、キリエはキラキラと目を輝かせて問う。
一瞬だけ戸惑うも、クレドは笑ってキリエの髪の毛に指を絡ませる。
「秘密」
クレドが魅惑的に微笑むと、キリエは少し不満そうに口を尖らせた。
「ほら、早く食べな。冷めるよ」
その言葉にまたキリエはフォークを持つ手を動かし始めた。
"親しい人"、そう聞いて今にも溢れ出しそうな殺気がふっと和らいだ。
なんとも単純な男である。
「……そう。でも俺は"親しい"っていう狭い枠に分類されるんだ」
一見悲しそうな台詞に聞こえはするが、この男の顔は微笑んでいる。
しかし純粋なキリエは勘違いをして慌てて否定する。
「違うよっ。クレドはもっともっと大きいの! 世界で一番大好きだもん!」
クレドの想像を軽く超える大きな回答に、煽ったクレド自身が呆気に取られる。
半分は冗談、半分はどう思っているのか聞きたくて。
それなのに返ってきた言葉は彼を最高潮にもさせるような言葉だった。
まさか世界で一番という言葉が返ってくるとは予想もしていなかったのだ。
至って真剣な顔をする彼女は、じっとクレドを見上げている。
濁りのない綺麗な瞳に、他人にはわからないクレドのほんの少しだけ照れているような顔が写る。
「お前は優しいな。俺も、世界にキリエだけがいれば、それで良い」
「世界にわたしたち二人だけなんて、さびしいよ」
「そう? 俺はそれで充分だけど」
キリエは困ったように笑うと、クレドの首から腕を離して二人でテーブルに移動した。
相変わらずキリエの好物ばかりが並んでいる。
本来食べることが大好きな彼女は目が覚めて二日目だが、既に彼の手料理が楽しみになっていた。
美味しそうに食べるキリエをじっと見ながら、クレドはテーブルに頬杖をついて口を開いた。
クレドはキリエが口にした"ギル"が気になったが、嬉しそうに料理を見ている彼女を見ると、それに水を差すような真似はしたくないと思ったので聞くのは止めた。
きっと男だと彼女から直接聞いてしまうと、この穏やかな雰囲気に亀裂が走りそうな気がするから。
「クレドの料理はおいしいね。わたし、好きよ」
変わらずフォークで食べているキリエは嬉しそうな笑う。
「キリエが喜んでくれるなら、俺も作り甲斐があるよ」
彼女が喜んでくれて、趣味にしていて良かったと心底感じるクレド。
「キリエ、明日から俺が家にいなくても、平気?」
フォークを使って食べていた小さな手が、ピタリと止まる。
「え……どうして?」
明らかな不安を滲ませた表情をするキリエ。
「うん。まあ、仕事詰まってるんだ。でも、キリエが嫌なら此処にいるよ」
キリエを自宅に引き取ってから4日が経つ。
毎日毎日客を取っていたクレドは、いつも休日なんてない勢いのスケジュールだ。
それが4日も空けてしまうと、キャンセルをした客へのご機嫌取りもいろいろと雑務のような仕事が増えてしまう。
結局はキリエとの時間が更に減ってしまうことにも繋がる。
自分が思っていたよりもキリエは元気だし、この分だと家を空けても大丈夫だと思ったのだ。
「……」
しかし黙り込んでしまったキリエを見て、クレドは少しだけ困った顔をする。
「ごめんな。まだ不安だよな。此処に」
「だ、大丈夫! わたしなら、平気だよ!」
キリエは面倒見の良い幼馴染みの優しい返事を期待していたが、実際そう言われてしまうと自分の我が侭に嫌悪し、慌ててそう言った。
「……本当に? 無理してない?」
いくら慌ててキリエが否定しようがクレドが気付くのは当たり前で。
「うん、ホントだよ。わたしならちゃんとお留守番してるよ」
昔の彼女ならば"嫌なものは嫌"、"したくないものはしない"が当たり前で、こんなに聞き分けの良い返事はしなかった。
いい子のふりをしているのだろうか、そう考えてクレドはじっとこちらを見る翡翠の瞳を見返す。
「いいよ、無理しなくて。いくら家の中だからって、フォレストで一人は怖いに決まってる」
何処までも彼女を甘やかしたい彼は、虫歯が出来そうな甘い笑顔でそう言う。
キリエが自分と一緒にいたいと、そう願ってくれるならば傍にいたい。
ところがキリエはふるふると首を横に振る。
「お仕事たいへんなんでしょ。わたしなら大丈夫だよ。いい子で待ってるから」
「けど、」
「大丈夫! 家で大人しくしてる!」
さっきまでは不安そうにしていた癖に、次は頑として意見を譲らないようだ。
クレドは仕方なく溜め息をつき、「わかった」と頷く。
キリエが大丈夫だと言ってくれれば、クレドもクレドで仕事を消化できるから有り難いことではある。
もちろんキリエを一人にする限り心配ではあるが。
「ねえ、クレドは一体どんなお仕事してるの?」
クレドが"仕事"をしていることが物珍しいのか、キリエはキラキラと目を輝かせて問う。
一瞬だけ戸惑うも、クレドは笑ってキリエの髪の毛に指を絡ませる。
「秘密」
クレドが魅惑的に微笑むと、キリエは少し不満そうに口を尖らせた。
「ほら、早く食べな。冷めるよ」
その言葉にまたキリエはフォークを持つ手を動かし始めた。