涙のあとの笑顔
 病室へ行くと、本人はいなかったので、一時間ほど待ったが、戻って来なかったため、病院を後にした。

「また後日、行くつもりよ」
「私も一緒に・・・・・・」
「イーディ、二人きりで話したいの」
「そうよね」

 驚かされることばかりだった。村人達とニールさんが繋がっていることもレイバンお兄ちゃんのことも。

「フローラの家を燃やした人は・・・・・・」
「私は村人の誰かだろうと思っていたけど、どうも違うみたい」
「人の家を平気で燃やせるなんて異常だわ」

 実際に村人達が本当にやっていないとは信じることができなかった。知らない誰かがやった可能性も考えられるが、今回の件で不信感をさらに強く抱くようになった。

「あれから毎日穏やかね」
「空は綺麗。見ていると、あの出来事が何もかも幻のように思えるね」
「でも、幻ではない。今でも怪我で痛みに苦しんでいる人や恐怖でショックを受けている人は大勢いるわ」
「私がここに来たばっかりに・・・・・・」
「違う!違うわ!あなたは何も悪いことをしていない!」

 イーディは外にまで響くように叫び続けた。

「あなたがどこで何をしようが、彼らには関係ないでしょ?」
「恨み続けていたの。彼らは私のことを何年も・・・・・・」
「でも、それは誤解なんでしょ?」
「人は一度思い込んだものをすぐに別の形にすることができない。どんなに言い続けても、聞く耳を持たなければ何の意味もないもの」

 わからなかった。どうしてそこまで彼女のことを信用し続けていたのか。
 彼らはこれからも見えない糸に絡みついたままなのだろう。それは本人も他人ももう解くことはできない。

「彼らには重い罰を受けるべきよ」

 大切なものを嘲笑いながら踏みつけにした。
 例え死んでも、許したりしない。もちろん、彼女のことも。
 
「この話はここまでにしよう、イーディ」

 イーディは悟って、この話題を口にすることはなかった。

「やっと来たわね」

 さっきの声と違っていたので、イーディを見ると、何やら嬉しそうにしている。
 部屋には私達だけなのに何が来たのか理解できなかった。

「何?」
「決まっているじゃない。フローラの誕生日!」

 誕生日を迎えた私より嬉しそうにはしゃいでいる。

「はい、誕生日プレゼント!」
「ありがとう、開けていい?」
「もちろんよ」

 箱の中に入っていたものはティーカップと紅茶だった。カップはシンプルなデザインとなっていて、自分の好みにぴったりだった。
 こんな素敵なものをもらえるなんて思っていなかった。
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