週末シンデレラ


「それがほしいのか?」
「あっ……ち、違います」

係長は今にもズボンのポケットから財布を取り出そうとしている。

わたしは慌ててぬいぐるみを元の位置に戻した。

「ただ、見ていただけなので。そうだ、帰る前にお手洗いへ行きましょう」

わたしは半ば強引に係長をその場から連れ出すと、お手洗いへ向かった。

危ない……また、係長になにかしてもらうところだった。

麻子に教えてもらった通りにメイク直しをし、鏡の前でひと息つく。

お手洗いから出ると、待ち合わせた場所には、まだ係長の姿がなかった。

「混んでるのかな?」

それにしては、さきほど入っていった男の人がすぐに出てくる。

もしかして、体調が悪かったのか……と思っていたら。

「やっぱり、カオリさんに似ているよ」
「きゃっ……」

背後から、モフッとしたもので肩を叩かれ、思わず声をあげる。

動揺しながら振り返ると、係長がさきほどのぬいぐるみを持っていた。


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