週末シンデレラ


ま、まずい……ウイッグが……っ!

「つ、都筑さん。あのっ……」
「いいから。なんだか、雨に濡れた子猫を拾った気分だ」

係長はクスリと笑いながら、楽しそうに言う。

「て、手を……んっ」

手を止めてほしいのに、頭が揺れてうまくしゃべれない。

しかも、濡れた首筋にタオルがあたり、くすぐったい。思わず肩を震わせて、小さく声を漏らしてしまった。

「……カオリさん」
「は、はい?」

係長に呼ばれ、タオルの隙間から上目でたずねる。

「すまない、理性が飛んだ」

係長の声音が、甘く低いものへと変わった。

「つづ……ん……んんっ」

係長の顔が目の前に……と思った瞬間、唇になにかが触れる。柔らかで温かなそれに、思考が真っ白になった。

な、なにこれ……キスしてるの? わたしと係長が!?

ウイッグは取れそうだし、急にキスはされるし、頭の中は混乱していた。

は、離れなくちゃ。でも、力が入らない……。

初めてのキスに、身体の芯が火照りだす。

ひざの力が抜けてしまいそうになり、係長の腕を持った。手にギュッと力を入れると、引き寄せるような格好になってしまう。

すると係長は、わたしがキスを受け入れたと感じたのか、唇を割って舌を挿し入れてきた。


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