週末シンデレラ
「社長はさ、本当は娘のためなんかじゃなく、世間体のために、真面目な征一郎をムコにしたかったんだろうな」
それから係長は、取引先と気まずいからと言って、異動願いを出したらしい。
すべてを知った営業部長や同僚も、「担当からはずすから営業部にいてほしい」と引き止めたらしいけど、部内で気遣われるのが嫌で、彼はそれを断ったようだ。
「都筑さんのことはわかったよ……でも、それと詩織のことを一緒にしないでほしい」
一也さんの話をじっと聞いていた麻子が、怒ったように口を尖らせた。
「詩織は浮気じゃなくて、ちゃんと理由があったのに。ちょっと理解してくれたっていいと思う。詩織……すごく悩んでたんだから」
「麻子……」
味方をしてくれる麻子に、胸の奥がじんと熱くなる。怒る麻子を見て、一也さんは困ったように首裏を掻いた。
「それは……俺だって、そう思うんだけど。征一郎、大学で出会ったときから、女性不信みたいなところがあったんだ。アイツから聞いたことはないけど、トラウマは五年前のことだけじゃない気がするんだよなぁ」
それはもしかしたら、わたしでは手に負えないようなことなのかもしれない。
だけど、もっと彼のことを知りたい、助けたいという気持ちが湧き上がってくる。
ふたりと別れるとき、係長を諦めようという考えはなくなっていた。