週末シンデレラ
「お待たせ。ごめんね、お手洗い混んでて……」
都筑係長と一也さんが待っている部屋の中へ、麻子と謝りながら入る。一也さんはわたしたちを見るなり、不思議そうな顔をした。
「え、あれ? ふたりとも……あれ?」
それもそうだ。お手洗いから戻ってきたと思ったら、わたしたちの髪の長さが変わっているのだから。
けれど、そこは細かいことを気にしない一也さんらしく、麻子が「シーッ」と合図を送るだけで、特になにも突っ込んでこなかった。
……緊張する。
自分の席へ腰をおろしながら、足が震えるのを感じる。のどがカラカラに渇いていたので、わたしはうつむいたまま水が入ったコップを取った。
一気に飲み干してしまいたいけれど、顔をあげて係長にばれるのが怖かったので、チビチビと口へ含む。
麻子がわたしを気にして、尻目でこちらを見てくるのがわかった。
しかし、なにも知らない一也さんは、楽しそうにメニュー表を広げて店員を呼んだ。
「とりあえず、なにか飲もうよ。俺と征一郎はビールだろ。麻子はカシオレだよな。詩織ちゃんは?」
「あっ……!」
そういえば名前……!
見た目を変えても名前がそのままだと、疑われてしまうかもしれない。
「しお……」
「あ、わた……わたしもカシスオレンジでっ」
一也さんに再度名前を呼ばれそうになり、わたしは慌ててそれを遮った。一也さんは「了解」とだけ返事をしてくれると、適当に料理を注文していた。
しかし、一也さんの隣に座った係長が、じっとこちらを見てくる。それはうつむいていても、痛いほど視線を感じるくらい露骨なものだった。