週末シンデレラ
……五年前?
わたしが入社する前だ。なにかあったのかな。でも、それはわたしが気にすることじゃないし……。
「まぁまぁ、そういうなよ。かわいい子だったし、性格も良さそうだったぞ。それに、べつに付き合えって言ってるんじゃないんだ。嫌だったとしても、席の時間が決まってるんだ。二時間の我慢だろ」
一也さんの言葉を、係長は眉をしかめて聞いていた。嫌々ではあるが諦めているみたいだ。
「二時間の我慢……か」
ふたりの様子を見ていたわたしは、無意識に呟いていた。
「ご、ごめん。一也って、そういうところ無頓着っていうか……」
それを聞いた麻子がわたしに手を合わせて謝る。どうやら、わたしが一也さんの言葉に傷ついたと思っているらしい。
でも、わたしが「二時間の我慢」という言葉に引っかかったのは、傷ついたわけでも、怒っているわけでもない。
……腹を括ったからだった。
「麻子のウイッグって、わたしにつけられないかな?」
「このウイッグを?」
「うん。そうしたら、わたしだってことが都筑係長にバレないと思うから」
メイクだけでも随分変わった。服装だって、いつもは制服なのに今日は私服。
そのうえ髪型を、黒髪ショートボブからゆるふわな栗色に変えれば、まさに別人だろう。
いつも話をしている美穂ならともかく、普段接する機会が少ない都筑係長に、わたしだとわかるはずがない。
「わかった。じゃあ、わたしも詩織だってバレないように気をつけるね」
麻子と密約を交わすかのように深くうなずき合い、わたしたちはウイッグをつけるためにお手洗いへ戻った。