週末シンデレラ


「危ないっ」

駅構内に都筑係長の声が響く。わたしは咄嗟に手すりを握った。

「……よ、よかったぁ……」

手すりがあったから良かったけれど、そのまま前に転げていたら、前にいる人も巻き込んで下まで落ちているところだった。

もう少しで大きな事故になっていたかと思うと怖くなる。ホッと息をついて座り込みながらも、心臓は激しく脈打っていた。

「おい! 大丈夫か!?」

足が震えて立ちあがれず、その場にへたり込んだままでいると、血相を変えた係長が駆け寄って来てくれた。

「怪我はないか?」
「だ、大丈夫です……いっ……!」

係長に答えながら、まだ震えが残る足で立ちあがろうとすると、今度は足首に痛みがあった。

思わず、またへたり込んでしまう。

座ったまま足首を見ると、赤くなっていた。どうやら、踏みはずしたときに捻ったらしい。

踵だけでも痛かったのに……。

やはり慣れない靴は履くものではないと思う。

「赤くなっている。ひねったようだな……踵も靴擦れをおこしている」

わたしの異変に気づいたのか、係長が足元をまじまじと見ながら呟く。

ふたりともホームに続く階段で座り込んだままで、電車へ乗る人たちの邪魔になっていた。

このままでは周りの人に迷惑だし、係長にも……。

「あの、わたしは大丈夫なので。どうぞ、電車に乗ってください」

係長とはホームも違う。まだ二十時すぎだから電車は何本もあるけれど、わたしに付き合って乗り過ごすこともないと思った。

すると、わたしの言葉を聞いた係長は眼鏡の奥の瞳を見開き、不思議なものでも見るかのように凝視してきた。

その表情は驚いているようにも、怒っているようにも見える。


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