週末シンデレラ
「大丈夫だと……? きみは馬鹿か」
「なっ……ば、馬鹿って……いきなりヒドイです!」
「だって、そうだろう。立ちあがることができないほど痛いのに、大丈夫だと言って我慢する必要がどこにある」
「それは、都筑かか……都筑さんに迷惑をかけたくないから……!」
呆れたようにため息をつく係長に、腹の底からふつふつと怒りが湧き上がってくる。
係長が冷徹だとは思っていたけど、人の気遣いがわからないとは思わなかった。
「俺に迷惑をかけたくないから、大丈夫だと言ったのか?」
「そうです。なのに、わたしのことを馬鹿だなんて……あんまりです」
仕事でミスをして言われるならともかく、“サトウカオリ”としては二時間前に初めて会ったというのに、あまりにも失礼だ。
怒りから震える声で訴えると、係長は小さくうなずいた。
「そうだな。冷静さを欠いていたとはいえ、馬鹿だと言ったことは悪かった。しかし、俺は迷惑だとは言っていない」
「……たしかに、言ってませんけど」
「勝手に俺が迷惑していると思い込まないでほしいものだな」
「お、思い込んだわけじゃなくて……」
ただ、迷惑をかけないように、さきに帰ってもらおうと気を遣っただけだった。
しかし、係長はわたしの話を聞かず、周りを見渡して腰をあげた。