週末シンデレラ
「経理課にありませんか?」
「経理課にないから、総務課に聞いているんだが。ちなみに、総務課長は受け取っていないと言っている」
「でも、そんなはずは……」
「そんなはずはない、というのは仮定だろう? きちんと、どうなっているのか調べてから教えてくれ」
係長は、怒りも失望もない、きわめて冷静な声でそう言うと、自席へ戻っていった。
「調べてくれって……武田さんのデスクを?」
隣の席をじっと見つめる。個人のデスクはカギをかけて帰るけれど、課長が課内のデスクのマスターキーを持つこととなっていた。
「武田さん……失礼しますよぉ……」
総務課長からマスターキーを借りて、デスクのキャビネットを開ける。
人のデスクをあさるのは気が引けたけれど、やむを得ない。それに、計算書が出てきたら一件落着だ。
「あ、都筑係長。計算書、ありました」
最初に開けたキャビネットの引き出しに、運よく計算書があった。束になったそれを取り出し、経理課で座っている係長に見せる。
「それは、ちゃんと完成しているんだろうな」
「えっと……ま、まだみたいです」
「こういうときは完成しているかどうか、確認してから教えてくれ」
「……すみません」
せっかく計算書があって、嬉しかったのに……。
確認をしなかったのは悪かったと思うけれど、もっと優しく言ってくれてもいいのではないか。
苛立ちと悔しさで奥歯を噛みしめていると、それに追い討ちをかけるように、係長が口を開いた。
「給料という、全社員に関わる大事なことだ。遅れは許されないから、できるだけ、今日中に仕上げてくれ」
「わ、わかりました!」
なんで、わたしばかりが怒られなくちゃいけないのよ。絶対、定時までに仕上げてやる!
わたしは半ば投げやりに返事をして、意気込みながらデスクに向かった。