週末シンデレラ


「その……言い方が、悪かったかな?」
「……へ?」
「できるだけ今日中に……と言ったはずなんだが」
「だから、今日中に仕上げましたけど?」
「いや、違うんだ。無理をしてまで、必ず今日中に仕上げてほしいとは言っていない」
「え……じゃあ、明日でもよかったんですか?」

わたしが目を丸くして聞き返すと、係長は困ったような顔をして、グイと眼鏡のブリッジをあげた。

「そう言ったつもりだったんだが、俺の言い方が悪くて、うまく伝わらなかったようだな。加藤さんは最近残業が多いようだから、できるだけ早く帰ってもらいたかったんだ。今日中にできなくても、経理課のほうでなんとかするつもりだった」
「そ……そうだったんですね」

わたしがついムキになってしまったからいけなかったんだ……。

係長が不器用な人だと知っていたはずなのに、彼が気遣ってくれていることがまったくわからなかった。

わたしが呆然としたまま立っていると、係長は首裏に手を回し、苦い顔をした。

「しかし、こんなことを言っていては、せっかくきみが計算書を仕上げてくれたのに、無駄なことをしたと言っているみたいだな。決して、そう言いたいわけじゃないんだけど……やっぱり、うまく言えないな……」
「都筑さ……っ」

考えあぐねている姿が、土曜日に“カオリ”と接しているときの係長と重なり、うっかり「都筑さん」と呼びそうになる。

わたしは慌てて口をつぐんだ。


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