週末シンデレラ
本当は「ご苦労さま」って言ってもらえるだけで、充分なんだけどな……。
そう言いたいけれど、今までのわたしは係長にビクビクしていて、そんなことを言うキャラじゃない。
それに“カオリ”じゃないか、と疑われそうな気がしてやめた。
「都筑係長……ちゃんと、係長のおっしゃりたいことは伝わりましたから。それでは、おさきに失礼します」
そう言って頭をさげ、帰り支度を整えようと自席に戻る。すると。
「あ、あの……加藤さんっ」
バッグに荷物を入れて、事務室を出て行こうとすると、係長に引き止められた。
「はい?」
まだなにかあるのだろうか。
係長のほうを振り返ると、彼は眼鏡のテンプルをいじりながらうつむいている。その姿には見覚えがあった。
「……お疲れさま」
「え?」
「その……加藤さんがいてくれて、助かったよ」
係長は言い終えると、すぐに背中を向けてしまった。身体を反転させる瞬間に見えた耳は、赤く染まっていた。
もしかして係長は、頑張ってわたしに気持ちを伝えてくれているのだろうか。
「いっ……いえ、お疲れさまでした」
思わぬ係長からの言葉に、動揺で声が上擦る。
事務室を出てからも、心臓はしばらく、爆発しているかのようにバクバクと鳴っていた。