週末シンデレラ


「あー……係長って、心臓に悪い」

わたしは、住んでいるワンルームマンションで、食後のコーヒーを飲みながら、帰りがけのことを思い出していた。

今まで「お疲れさま」はともかく、「助かった」なんて言われたことがなかったのに。

どういう心境の変化だろうか。おかげで、動揺が冷めないまま最寄りの駅についてしまい、また階段から落ちそうになった。

そんなことを考えていると、ローテーブルに置いていたスマートフォンがメールの受信を告げた。

「美穂かな……?」

わたしが係長から怒られている最中、美穂からの視線を感じていた。昼休みにした話が本当なのか、疑問に思っていたのかもしれない。

「って、……つ、都筑係長……?」

美穂だと思ってスマホを操作すると、そこに表示された名前は都筑係長だった。

やっと落ち着いたはずの心臓が、また大きく脈打ちだす。日曜日に連絡先を教えてもらってから、メールはしていなかった。

誰に見られているわけでもないのに、わたしはその場に正座して、メールを開いた。

『うまくしゃべるには、どうしたらいいだろうか?』

「……え、それだけ?」

なにが書かれているのだろうかと身構えていたのに。

たった一文しか書かれていないメールを、何度も見直したり、受信ボックスを更新したりしてみるが、係長からのメールは、やっぱりそれだけだった。


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