俺様編集者に翻弄されています!
「ぶはぁぁっ!」


 悠里は湯船の中でバチャバチャともがき、気がつくとそこは家のバスルームだった。


「あ……れ?」


(も、もしかして……私、妄想しながらお風呂で寝ちゃったの?)


 間接キスから口移しなんて妄想が飛躍しすぎだ。そして得も言われぬこの虚無感といったらない。その時、浴槽のへりの端に、今にも流れ落ちそうな薔薇の入浴剤の空小袋が目に入った。薔薇の香りが妄想を誘発したに違いない。

(自宅のお風呂で溺れたなんて洒落になんないよね……)


 悠里はのろのろと浴槽から出ると、鏡に映った寝ぼけ顔を消すように、鏡にお湯をかけた。


「はぁぁ……今夜は“王子様とデートシリーズ”のドラマCDでも聴きながら寝よう」


 そう思いながら悠里は、思い出したように痛み出す靴擦れの足を引きずってバスルームを出た。
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