俺様編集者に翻弄されています!
 夏のニューヨークは日本までとは言わないが、結構蒸し日になる日が続く。そして雨も少ない。


 ニューヨーク都市圏を代表するジョン・F・ネディ空港に降り立った悠里は、思わず言葉を失ってほうけてしまった。


(ほ、ほんとに来ちゃった……)


 事前に準備していたわけでもなく、思いつきでここまで来てしまった。


 荷物も小旅行に行くようなバッグひとつだけで、とても海外にいく格好ではなかった。




「ああ、いたいた。悠里さんですよね? おかげで機内では快適でした」


「あ、ロディさん」


「楽しかったですよ、本当は時間があればこれからニューヨーク市内を案内してあげたかったんですけど、これから仕事なんです」



 手荷物を受け取っていると、再びロディが悠里を見つけて声をかけてきた。



「ホテルどことってあるんですか?」


 ―――ホテル……?


 悠里は目が点になった。


(そういえば、宿泊先のことまで考える余裕なんてなかった)



「あ、あの……ニューヨーク市内で予約無しで部屋取れるところってないですか?」

 その言葉にロディが目を丸くして驚いた。想像通りの反応に、悠里は身を縮こませる。


「え!? もしかして、ホテル取ってないんですか?」


「……はい、行き当たりばったりですみません」


 すると、ロディの顔がすぐに笑顔になって悠里の肩に手を置いた。


「君ってほんと変わってますね。あはは……益々気に入りました。私の会社の近くにビジネスホテルがあるので、そこをあたってみましょう」


「すみません、お手数おかけします」


「ああ、そうだ、これ名刺です。一応渡しておきますね、何か困ったことがあったら言ってください」


「……はい」


 悠里は一瞬だけ名刺を見るとバッグへしまい、ぺこりと頭を下げてロディの好意に甘んじることにした。

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