俺様編集者に翻弄されています!
 こうして見るとニューヨークは広い―――。


 悠里は幸運にも一室空いたホテルの部屋を確保することができた。


 数少ない荷物をベッドの上に放って、暮れゆく一日を窓の外から眺めていた。



 ロディの会社はこの近くにあるという。

 気づけばどこの会社に勤めているとか、どこに住んでいるのかすら聞きそびれてしまった。



(とりあえずニューヨーク市内の情報を集めなきゃ)


 何も知らないままでは何もできない。


 悠里はそう思い立つと、空港で買った市内地図をベッドに広げた―――。




 いつもとは違う街の喧騒が遠くから聞こえてくる。

 日本語ではない言葉が飛び交って、まるでここが異国の地のような気がする。



「ん……あ、あれ……ここは?」


 朝日が悠里の瞼を照らし、眩しさにうっすらと瞳を開けると、見慣れない天井がぼんやりとしてそして鮮明に目の前に浮き上がってきた。



(私の部屋……じゃない)


 悠里は霞がかった頭の中で昨日までの出来事を思い出した。


(そうだ、ここはニューヨーク……)


 昨日はあまりの疲労と気疲れに、地図を広げたはいいがそのまま泥のように眠ってしまった。


 くちゃくちゃになった地図を慌てて手で伸ばしながら、悠里は今日一日どうするかぼんやり考えあぐねた。


「……ん?」


 タクシーでロディに言われるがまま連れてこられたホテルだったが、地図を追っていくと、ここがニューヨークの五番街近くだということがわかった。


 けれど、ニューヨークは実際広い、この中から果たして氷室を探し出すことができるのかというマイナスな思考がよぎる。

 携帯の番号も知らない、住所もわからない、悠里はじわじわと沸き起こる不安と焦燥感に手のひらにじんわりと汗を感じた。



「氷室さん、どこにいるの……?」


 悠里は唇を噛んで、心細さに押しつぶされそうになりながら膝を抱えた―――。
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