俺様編集者に翻弄されています!
(うぅ……ひどい、これでも純情な乙女心なんだからね!)

 氷室とのやり取りを思い出すと、鼻息が荒くなるほどイライラが増した。


(……この味なんだっけ? 思い出しそうで思い出せない……まいっか)

 鼻から抜ける甘酸っぱくて華やかな香りに、だんだん気持ちが落ち着いてくると、氷室には似つかわしくないフレーバーだとつくづく感じた。そしてそのミスマッチさにおかしくて思わず笑がこぼれてしまった。


「面白いやつ……」

 
 社員に気を遣いながらも端をのろのろと歩く、そんな悠里の背中を、氷室は目を細めて見据えていた―――。








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