隣に座っていいですか?
桜ちゃんを思い出し
光沢のある石畳を、飛びながら歩きチャイムを鳴らす。

桜ちゃんいるかな?

久し振りに見る可愛い顔を想像し、扉を開くと

エプロン姿の婚約者が
私を出迎えてくれた。

「お隣のおそば屋さんの方ですよね」
想定外の人物に自分の甘さを嘆く。

そうだよ
婚約者が出る可能性もあったんだ。

早く帰ろう。
ソバを渡して逃げようとしていると

「よかったらお茶でもどうぞ」

誘われた。
マジか……。

「いえ、けっこうです」
自分と合わなそうな人と話すのはキツイ。逃げるに限る。

しかしながら
「紀之さんの話もしたいし、桜もまだ音楽教室から戻りませんので」

桜?呼び捨てかい?
紀之さんの話?
あのへタレのどんな話をしましょうか?
音楽教室?
何じゃそれ?走り回って遊ぶのが大好きな子が?音楽教室?

「どうぞ?」
にっこり笑顔でスリッパを出され

私は挑発に乗るように
足を踏み入れる。
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