隣に座っていいですか?

とりあえず
お風呂の用意を田辺さんに任せ
私は家に一度帰って
泊まり支度をしていたら

お母さんに見つかった。

「とまっ……泊まってくるから」

しまった。噛んだ。

「ちょっと座んなさいよ」
家出娘のように
コソコソと出て行こうと思ったら
しっかり捕まってしまい
閉店後の店に母と娘
向かい合ってテーブルに座り
個人面談のよう。

目も合わさず
モジモジしてたら

「いいの?あんた」

「え?何?何それ?」

「予感はしてたんだー。恵子ちゃんとさぁ、あんたは子供の頃から捨て犬とか捨て猫とか拾ってきて、お父さんに怒られてたし」

「何の話?」

「今度は子連れの男を拾いそうだ……って」

【拾って下さい】と、ミカン箱に入ってる田辺さんは、似合っていて想像しやすい。

「達ちゃんと上手くいってほしかったけど、奥さんを亡くした子連れの翻訳家を拾うのか?とさ、お父さんに言ったらねー」

「うん」
大反対された?

目線が下になり
磨かれたテーブルの木目しか見えない私。

「『郁美が選んだ男だから、仕方ないだろう!』って怒鳴られた」

お父さん。

お母さんは笑って続ける。

「お母さんは心配なんだ。桜ちゃんは今は可愛いけど難しい年頃になって、あんたが実の母親じゃないから反抗するんじゃないかとか」

「反抗期は誰にでもあるよ」
ムッとして言うと
また余裕で笑われた。
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