隣に座っていいですか?
何も言えずに下を向き
手入れの行き届いた床を見つめていると視界が揺れる。

「あっちで話そう」

彼は私の身体を抱き上げ
お姫様だっこ状態でベッドに運び、自分も横になって私を抱きしめる。

ふわふわベッドの上
ふわふわワインが効いているのか、彼の胸元が温かくて切ないのか、なぜか泣きたい。

彼の言う通り

私は亡くなった奥さんを気にしてる。

「嫉妬してる」
桜ちゃんが居ないから
私は
強くたくましい母親から
嫉妬深くイジイジした女に変わる。

「紀之さんが一番大切な女性に、嫉妬してる」

涙が
ボロボロ溢れ出る。

「理解してる。理解して結婚した。桜ちゃんの事も大好きだから、いいお母さんになろうとした。自分なりに一生懸命頑張った」

泣いてる私をあやすように
彼は優しく背中をさすり、その唇は私の額に重なる。

「だから、紀之さんが……この前みたいに……和室で仏壇の奥さんとお話している所を見たら……きっと、私じゃ物足りないんだなって、奥さんが恋しいんだなって思ってしま……う」

「バカな子だね」

「バカだもん」

「本当にバカですよ」

彼は静かに笑い
泣いてる私の顔を上げて

そっと
唇を重ねる。

「もう泣かないで」

「嫌だ」

「困った人だ」

彼は私をきつく抱きしめ

深いキスをする。
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