隣に座っていいですか?
敗北感なんて
覚えなくていいのに

何と言えばいいのか
やっかいな相手を
もしかしたら
好きになってしまったのかもしれないと……

いや!
いやいやいや違う!
ただのお隣さん
私は桜ちゃんが心配なだけ!

そんな気持ちが交差して
正直混乱中。

自分で自分の気持ちがわからない

大人なのに。
って悩んでいる時間がない!

「お邪魔しました」
足早に移動して玄関で靴を履くと

「郁美さん」
田辺さんの声が響く

「はい」

「本当に本当に本当に、ありがとうございます。何度礼を言っても足りないぐらいです。ありがとうございます」

大きな身体を丸め
こんな私に一礼。妙に気恥かしい。

「いえ、あの。私こそ寝入ってしまってすいません。お邪魔しました。お大事に」

逃げるように田辺家を出て庭を走り、白い塀の奥から外を覗く。

いない
誰もいないね。

静かなる土曜の午前
こっそりと
お洒落な門を開き
敷地の外に出る。

成功。

愛人の家から帰る男みたい
あぁ
疲れた。
隣りの我が家に向かいながら、肩をぐるぐる回していると

「郁美!」って


会いたくない男の声がした。
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