桜縁
周りを見渡しても、誰もいない……。
前は吹雪でよく見えないが、黒く大きなものがやって来るのが分かる。
誰かが先方に立っているようだ。
何処かで見た羽織りを着ている。
よく目を懲らして見ると、
その者の手には刀が…、
そして、その羽織りは青い………。
「!!」
夢から覚めると、そこには暗がりが広がっていたが、いつもいる自分の部屋なのだと理解する。
「………夢。」
なんであんな夢をまた見たのか、分からない。
月は布団から起き上がると、外の空気を吸いに表へと出た。
すっかり夜更けになっていて、皆寝静まっていた。
すると、そこへ湯上がりの沖田が通りかかる。
「あれ、月ちゃん?」
「沖田さん。」
沖田はなんでこんな時間に月がいるのか、分からないといった感じで目を丸くしていた。
「どうしたのこんな所で?もしかして、夜遣い?」
「相変わらずですね沖田さん…。」
まったくこの人と会うと、自分の悩みなどちっぽけなものだと感じてしまう。
月は拗ねたように沖田の冗談に返すことなく、縁側に腰を下ろした。
「なに、もしかして本当に怒っちゃったの?」
「そうではありません。」
「じゃあなに?蛍のこと?」
沖田も意味深げに月の横の縁側に腰を下ろす。
「いいえ、そうじゃありません。……沖田さん、夢って信じますか?」
「夢? なに突然。」
「さっき夢を見たんです。それが前に見た夢と同じ夢だったんです。」
「ふーん…。」
「同じ夢を二回見たら正夢っていうから、もしかしたらと思ったんです。」
「……他の人が見たならともかく、君が見た夢なら信じられるかな。っで、どんな夢なの?」
月は思い出すように目を細めながら、夜空を仰ぐ。
「……雪が降っていて…、周りはよく見えないんですが、そこはどうやら戦場のようで、そこにいるのは私一人だけのようなんです……。刀を持っていて、何かを守っているみたいなんですが、それが分からなくて………、そしたら前から敵の大群が押し寄せて来るんです………。沖田さんはこの夢がなんなのか分かりますか?」
突拍子もない質問だとは思ったが、月は隣に座る沖田に聞いてみた。
いつもの沖田なら、変な夢だとか稽古が足りないとか言って茶化してくるとこだが、月の真剣さが伝わったのか考えていた。