桜縁
「……一人で何かを守ってるのか……。」
「………。」
「それって月ちゃんの未来じゃない?」
「えっ!?」
「だって同じような夢、二回も見たんでしょ?なら、考えられるとしたら未来しかないんじゃないかな?」
「え……、でも……。」
あんな夢が本当に起こるのだったら、怖くてたまらなくなる。
月は自分の胸を無意識のうちに掴んでいた。
「大丈夫だよ。そんな顔しなくても、夢は夢なんだし。」
「………。」
「それにそんな大群が押し寄せて来るまで、守らないといけないものなら、一つしかないでしょ?」
「へ…?」
月は思わず沖田を見上げると、沖田が目を細めて微笑みながら、月の耳元で囁くように言う。
「僕と月ちゃんの子供でしょ。」
「!!」
その言葉に驚いて一気に紅潮する。
「な、な、ななな……!なんてことを……!」
「だってそれしかないじゃん。僕も月ちゃんと子供のためなら、なんだってするけどなー。」
「も、もう…!人が真剣に悩んでいる時に!」
結局、こうやってからかわれてしまうのだ。
真っ赤な顔をして、怒りながら月は立ち上がる。
「何処行くの?」
「お風呂です!」
「ふーん、なら、僕が行って脱がしてあげようか?」
「!!」
沖田なニヤニヤとしながらこちらを見ている。
完全にからかわれている!
「けっこうです!!」
そう強く言い放つと、ドスドスとお風呂場へと向かって行った。
その背を見送りながら、沖田は微笑んでいた。
一方、長州では池田屋事件で吉田麿をはじめとする藩士を殺したとして、新撰組の一部の隊士達の人相描きが出来上がっていた。
過激派の反発は想像以上に酷く、会津や新撰組に対する怒りの声は日増しに大きくなるばかりだ。
高杉も池田屋だけならまだしも、会津が行う民への虐待は許せるものではなく、今すぐにでも幕府へ戦を仕掛ける準備をも行っていた。
「これが、その人相描きか?」
「はい。」
高杉は一枚一枚隊士達の人相描きを確認していく。
池田屋の一階の藩士を容赦なく斬り捨てた新撰組二番組組長『永倉新八』。
局長『近藤勇』。
その勢いに乗り二階の藩士達を皆殺しにした新撰組八番組組長『藤堂平助』。
そして…、
会津とも長州とも縁がある男、新撰組一番組組長『沖田総司』。