桜縁
葬儀が始まり、民達は嘆きの叫びを上げてその悲痛をあらわにした。
目の前見渡す限り、過激派の民達で溢れていて、藩邸に入りきれない者達もいた。
この者達が暴動を起こすとなれば、長州はたまったものではない。想像するだけでも恐ろしいことになりそうだ。
「罪人の顔を出せ!」
高杉の指示で一勢に、罪人となる新撰組の者達の顔が民達にさらけ出される。
「……っ!」
その中の女の人相描きに、お清は自分の目を疑った。
そんなはずはない……。
隣には娘を死に追いやった側室のお勇とその侍女達がいる。
感ずかれないように、なんでもないフリをしながら、もう一度その人相描きを確認した。
「…………。」
暗がりではっきりとは分からないが、間違いない…。
炎に漂う娘…。
今まで探し続けてようやく確信が持てた娘の人相描きであった。
それを知らない高杉は、民達を粛清するために宣言をする。
「長州の民達よ聞け!長州は池田屋事件以来、幕府から多大なる侮辱を受けている。そして今もなお、多くの同士の魂が憂いて悲鳴を上げている! だが、約束しよう!必ず我が長州はこの侮辱に対する敵を討ち、多くの同士達の魂を慰めることを……!」
宣言と同時に新撰組隊士達の人相描きが、棺の前で燃える炎にかざされる。
「この者達はあの日、池田屋で多くの同士を討ち、今この棺の中にいる吉田隊長を討った者達である。今こと時より、この者達を含め、幕府よりの人間は長州の大罪人として、それ相応の償いで報いることになる!!必ず敵討ちを遂げるのだーーーー!!!」
『わっーーーー!!!』
多くの歓声と共に敵討ちという名目で心と心が一つになる。
自分の娘とは知らずに、宣言を叫ぶ高杉。
その目の前で敵討ちの相手として、娘の人相描きが燃える。
桂もお清もそれをただ黙って見ているしかなかった………。
葬儀の最中、美智子は新撰組に送る娘の荷物を用意していた。
姫とはいえ、今は人質。
まんろくなもてなしわ受けていないはずだ。
母は身寄りの品を荷物に詰め込みながら、最後に短剣を手に取る。
「…………。」
高杉が娘の荷物に混ぜておくようにと、頼まれた品だ。
誰が好き好んで我が娘を、死に導こうか…。
だが、これも姫としての運命なら仕方のないことだ。