桜縁
美智子は入れた荷物を出し、一番底に隠すように入れると、出した荷物を元通りに戻した。
するとそこへ、お清が飛び込んで来る。
「失礼致します、奥様!」
「何事です?」
「大事なことをお伝えしにまいりました。」
お清は辺りに誰もいないことを確認し、部屋の襖を閉めた。
「いったいどうしたの?」
「奥様、落ち着いてお聞き下さい。」
お清の様子でただならぬことだと察し、美智子はその瞳を見つめる。
お清は二枚の絵を美智子の前に広げる。
「これは…人相描き…?」
「はい…。池田屋でお嬢様を連れ去ったという新撰組の者達です。」
お清は娘の絵に手を添え、見るように促す。
「この者は新撰組でただ一人の女でございます。私も一度しかお見かけしませんでしたが、奥様に瓜二つだったのでございます。そして……この娘には胸に傷があるそうです。」
「!!」
「幕府に仕えておられる松本先生に、この間都に行った時に直接聞くことが出来て、間違いないそうです。」
「……この娘が……。」
美智子は確かめるように、我が子かもしれない娘の絵を愛でる。
「そして、この男……。」
もう一枚差し出された絵。
「この男がその娘と仲が良いそうです。まるで恋仲のようだとか……。」
「やめて!!」
嫌な予感が当たりそうになり、お清の言葉を遮る。
「頭がおかしくなりそう……、史朗…あの子の行方は?」
「それが、薩摩にいるそうなんです。今はそれしか……。」
頼りの者からの情報だから間違いないはずだ。
ただ、それしか情報がない。それにまさか、探し続けていた娘が、敵と恋仲など……。
そしてその相手がまさか……。
「蛍と同じなんて……。」
両者の居場所が分かっただけで、まだなんにも分かっていない。
とにかく、この娘が我が子なのか確かめなくてはならない。
「奥様……。」
「まずは、史朗を…あの子を探し出さなくては……。」
「ですが、先にお嬢様を見つけては?」
「ダメよ。薬が関わっているのだから、下手をしてあの人達に見つかっては、また妨害されてしまって返って危険だわ。」
あの件は今だ解決されていない。立場上、薫は姫だが巫女でもある。
それに、それに備わっている能力まで奪われてしまっては、取り返しの付かないことになってしまう。