桜縁



だから、今だ居場所が特定出来ていない史朗から探すのだ。


「……坂本さんに会うわ。連絡してちょうだい。」


「わかりました。」


お清はすぐに京にいる坂本に便りを出した。






『坂本龍馬』。


土佐藩出身の浪士。かなりの変わり者ながら、外国進出を目指すいわば、幕府にとっては格好の的の人物である。


そんな中、ちゃっかりとつい先日、『お凌』という可愛らしい奥様を娶ったばかりである。


普通なら、敵から身を潜めるために何処か遠くへ隠れるのが筋だが、この男変わり者だけに、敵地のど真ん中となる京に移住していた。


今のところ、警戒人物とされているが、いずれは要注意人物となり、この京を始め、世界を驚かす人物となるだろう。


敵であり戦争中であった薩摩と長州を休戦に導いた坂本であるが、ただいま長州と薩摩の仲立ちをしようと必死になっていた。


今のところどちらの藩も、幕府よりのため坂本の話しなど半信半疑といったところだ。


そんな中、龍馬の妻お凌は美智子と親交のあった侍女であり、美智子の事情をよく知った故に、協力関係を結んでいたのである。


長州が問題に侵されている今、夫高杉に頼むわけにも行かず、美智子はお清と共に、坂本達と待ち合わせしている長州と都の境にある神社で落ち合わせていた。


実はここまでの情報を得ることが出来たのは皆、お凌と龍馬のおかげなのである。


「奥様……!」


草陰に身を潜めていたお凌が姿を現す。


「お凌…!」


お清は二人の再会の間に、辺りに誰もいないか警戒する。どうやら人気はないようだ。


「元気でいましたか?」


「はい。そちらもお元気そうで。それで、今日はどういったご用件で?」


「薩摩にいるという『史朗』のことを知りたいの?手がかりは何かないの?」


「ああ…甥子さんですね……。」


史朗はあの件で亡くなった侍女の息子だ。罪の濡れ衣を着せられ殺されたのだ。


「大久保様も史朗さんに関しては必死に探しておられますが、特定にまでは至っていません。」


「でも、薩摩にいるっていうのが分かってるのに、手がかり一つないの?」


「……藩士の一人が、史朗さんらしき人影を見たのですが、それっきり……。もしかしたら、労役所に行かされているのかもしれませんし、お嬢様を探すために身を潜めているのかもしれません。どちらにせよ、手がかりがそれだけしか…。」
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