桜縁
「そう……。薩摩にいると聞いて、会える手がかりが掴めたと思ったのだけれど、軽率な考えだったわね…。」
「いいえ、奥様がそれだけ必死になってお二人を探されているのですから、お二人には必ず会えます。」
「お凌……。 最後に一つだけ……。」
美智子はお凌に一枚の絵を見せる。
「この子が本当に我が子なのか、もっと詳しく知りたいの。」
お凌は美智子の手から、絵を受け取る。
胸に傷や顔だけでは、確信が持てない。もっと確かな証拠が欲しい。
それは母親の切なる願いであった。
「もし、我が子が長州の民なら…、一目で確信が持てるのだけれど、私には見ることが出来ない。どんなに似てると言われても、傷があると知っても、我が子という確信が持てないの……!」
都に行けばすぐ近くに我が子がいるかもしれない。
だが、それは絶対に叶わない願い。
母の目から涙がこぼれ落ちる。
「奥様……。」
それぞれの目にも涙が溢れる。
今、美智子が頼れるのはお凌だけだ。
「分かりました。出来る限り詳しく調べて見ます。」
お凌も決して表立って動ける立場ではない。だが、主のためにそうする決意を固めていた。
「それと奥様。こんな時に言いにくいことですが、長州は近頃嫌な動きを見せていると聞きます。」
「え…?」
「詳しくは私も分かりませんが、どうかお気をつけ下さい。」
「………。」
お凌の話しはにわかに信じ難い話しではあるが、そうでないと言い切れない。
しかし、高杉が調べて出てこないことを、美智子が調べても見つかるはずもなく、それぞれの夜が暮れて行く……。
長州と新撰組…。
薩摩と長州と幕府……。
それぞれの藩の中で、もつれた糸が手繰り寄せられるように、運命の糸が解かれようとしていた……。
月は日を増すごとに、夢を見るようになっていた。
沖田は未来の夢だとが言っていたが……。
最近は過去の夢も入り混じって見るようになっていた。
正直、寝るのが怖くて月は寝不足の日々を過ごしていた。
長州の蛍は人質で、日中は隊士達の監視化にあるが、婚約者という名目で沖田といることが多い。
沖田との関係が知られないだけいいが、それも時間の問題なのかもしれない。
周りの状況はというと、毎夜眠れないので昼の巡察ではなく、夜の巡察に同行している。