桜縁
「が、頑固って…、私そんなに頑固じゃないですよ!」
「いや、頑固だな。お前のような頑固な女は珍しいやもしれん。」
「なっ……!」
「とにかく、お前は休め。」
抗議する暇もなく、言葉を遮られてしまう。
思わずムッとなってしまう月。
「嫌です!」
「なに?」
「やりかけた仕事をそのままにして、休むことは出来ません。余計に目が覚めてしまいます。」
なおも食い下がる月。
こうなってしまっては桿でも動きそうにない。
「分かった。ならば、その繕い物とやらを持って俺の部屋へ来い。」
「え…?」
「俺が手伝ってやる。」
「それじゃあ、私がやる意味がないです!」
「お前が休まぬと言うから悪い。俺が手伝えばその分早く終わる。そうすれば、お前の休む時間を作れるということだ。」
「だから、それじゃあ意味がないんですってば!私は大丈夫ですから、斎藤さんこそ休んで下さい!」
「俺のことは大事ない。余計な心配をするな。」
「しますよ!…だいたい、斎藤さん裁縫とか出来るんですか?」
疑いの眼差しで斎藤を見る月。
実際、斎藤が裁縫などやってるところを見たことがなければ、聞いたこともない。
それに、裁縫をやっているところなど、まったく想像がつかない。
「……出来ないことは…ないはずだ…。」
少し答えに間をおいて、横目を向いて答える斎藤。
「その間、すごく怪しいです。」
「………。」
結局、裁縫は月がやるしかなさそうだ。
「私のことは気にしなくていいですから、斎藤さんは私に構わず休んで下さい。」
斎藤のその気遣いだけで月は嬉しかった。にこりと笑って休むように促す月。
だが、斎藤も一度言ったことを引っ込めるわけにはいかず、何より体調の悪い月を差し置いて休むわけにはいない。
「ならば、平助を起こすとしよう。ついでに新八も起こせば、朝までには終わるはずだ。」
「えっ!?」
「ちょっと待ってろ。」
と、行って二人の部屋へと向おうとする斎藤。
せっかく休んでいるのに、雑務のために起こすなんてあんまりだ。
しかも、この二人に裁縫なんて絶対に無理だ!とんでもないことになることは、目で見るより明らかだ。
慌てて斎藤を止める月。
「ちょっと待って下さい、斎藤さん!なんでよりによって、その二人なんですか!?」