桜縁




と、いうより縁側に座ってお茶を飲んでいたようだ。


柱にもたれるようにして眠っていた。


「……何故、自分の部屋で寝らんのか……。」


斎藤は月の部屋に広がる繕い物を一瞥し、月の隣に座る。


「んんっ……。」


悪い夢を見ているのか、月の表情が苦しそうだ。


「悪い夢を見ているのか?」


斎藤はそっと自分の肩に月の頭を乗せる。

すると…、


「母さん……。」


「……!」


母親に会う夢を見ているのか、月の目から涙がこぼれる。


斎藤はそっとその涙を拭う。


「母親に会いたいのか…?」


その寝顔に問うが、返ってくる返事はない。


斎藤はそのままずっと、寄り添うように月の側に付いていた。








なんだか、ポカポカと温かい……。


こんな風に心地好く眠るのは久しぶりかもしれない……。


このままずっと……。


「………。」


「…………。」


「………………。」


「…………キャアっーーー!!」


月は慌てて飛び起きる。


なんと隣の畳みの上で斎藤が一緒になって眠っていたのだ。


「……ーーっ!」


月の悲鳴を聞いて斎藤も起き上がり、自分の状況を確かめ、月と目が合う。


「す、すまん!俺としたことが、つい眠ってしまった…!」


あわてふためく斎藤の顔は赤く染まっていた。


まさか、本人も寝てしまうとは思わなかったのだろう。


自分も一回も起きることなく、熟睡してしまったのだからおあいこのような気もする。


「い、いえ…。」


とは言ったものの、やはり恥ずかしい…。


月も斎藤から顔を背けてしまう。


「すぐに出て行くゆえ、そこで待っていろ!」


「………。」


相当慌てているのか、言っていることがおかしい。


いつも冷静な斎藤が、こんなに慌てた姿は見たことがない。思わず笑ってしまう。


「な、なにゆえ笑っている?まさか、何処かに寝癖がついているのか?それとも、着物の着方がおかしいのか?」


さらに慌てて身の回りを確認する斎藤。その姿がおかしくてさらに笑ってしまう。


「月!俺は真面目に聞いているのだぞ?」


斎藤の声色が少し低くなり、真剣な目をしていた。


「ごめんなさい。斎藤さんがあんまり慌てるものだから、つい……。」


「ん?慌てている姿がそんなにおかしいのか?」


「いえ、そうではありません。」


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