桜縁
「ありがとうございます沖田さん。」
会って話したりすることが近頃少ない月と沖田。
だが、二人の気持ちは通じ合っている。
沖田の背を見送りながら、月は『愛しい』という想いを募らせていた。それは沖田も同じであった。
月が愛しい…。
沖田が愛しい…。
言葉には出さないが、二人の愛はゆっくりと温められていた。
そしていよいよ使いの者達が都に向けて、出立する時が来た。
お陵に調べさせてみたが、結局何も分からず、美智子はお清を行かせることにした。
「くれぐれも気をつけて。」
「はい。」
用意された荷物を持ち、部屋を出ようとすると、お勇の侍女がやって来る。
「失礼いたします。」
「何の用ですか?」
「失礼ながら私も一緒に都へ行くことになりました。」
「えっ?」
「仮にも敵地へ向かうのだから、人は多い方がいいと、お勇様が旦那様に願い出たのでございます。何やら最近、お忙しそうなので。」
にこりと笑う侍女。二人は顔を見合わせる。
間違いなく感ずるかれていたようだ。見つからないようにしていたつもりだったが、やはり侮れない相手だ。
ここで行かせないようにすれば、あの事件に関することが明らかとなってしまう。
「……分かりました。あなたも一緒に行って、蛍を手伝ってあげてちょうだい。」
「承知いたしました。」
軽く会釈をして部屋を出て行く侍女。
「厄介な事になったわね…。何処から漏れたのかしら?」
アッサリと行ったところを見ると、今は感ずいただけで相手も様子を見ているだけかもしれない。どちらにせよここからが本番だ。
「とにかく、あの子が本当に『薫』なのか確かめて来て。」
「分かりました。」
お清は美智子に挨拶を済ませると、都へ向けて旅立った。
都へは四半日で到着し、会津の許可も得てから、都の外れにある新撰組屯所へと向かった。
噂通り男ばかりの所で、警戒が物々しい。
お清は一緒に来た侍女である『美佐』と一緒に、局長である近藤に挨拶へと向かう。
部屋には近藤と土方、山南に沖田も一緒にいた。
沖田とは初めて顔を合わせるが、男というよりも少年に近い感じがするが、その目は冷たく鋭い刃のようであった。
この青年が蛍の婚約者なのだ。
二人は近藤達の前に座る。
「遠路遥々ご苦労様でした。」