桜縁
「いえ、こちらこそ姫が大変お世話になっていると聞きました。」
「長州の高杉殿はお元気ですかな?」
「はい、元気にしております。」
緊張しながらも近藤との会話を進めるお清。
近藤の隣にいる土方と自分達の横の壁にもたれるように座っている沖田の目が怖い。
嫌な汗をかきそうだ。
すると、黙っていた土方が口を挟む。
「本来ここは女人が立ち入る場所じゃねぇし、敵が立ち入るなんてもっての他だ。ここにいる以上、あんたらあの姫さんとやらと一緒だ。妙な真似をしたら即座に殺される。それを覚えておいてもらおう。」
「はい……。」
鬼副長の鋭い目つきがまるで、研ぎ澄まされた刃物ように、お清の胸に突き付けられる。
絶対に気なんて抜いていられない。
「おい、総司。姫さんとこに案内してやれ。ついでにあいつも呼んで来い。頼みたいことがある。」
「はいはい。じゃあ、こちらへ来て下さい。」
沖田が立ち上がり部屋を出て行く。それに続くようにして二人も部屋を出て行った。
「……まったく、女性二人にあんなこと言わなくても良かったのではありませんか?」
二人が出て行ったのを確認してから山南が土方に言った。
仮にあの二人が怪しい行動を取っても、新撰組は二人の処分を許されている。それに殺しても、侍女だから長州にとって何の問題もない。
「トシは優しいからな。黙っているわけにはいかんかったのだろう。な、トシ?」
もう分かっていると言わんばかりにニコニコとする近藤。
「……チッ!」
見透かされたのでは仕方がない。
土方はそっぽを向きながら、手で頭を掻いていた。
「お食事、ここに置いておきます。」
月は持って来たご飯を、机の上に置き部屋を出て行こうとする。
それまでじっと探るように月を見るか、無視するかの蛍が口を開いた。
「……やっぱり分からぬな。」
「……?」
「長州の者であるのに新撰組に加わり、同士を殺した。その上他の者とは違い新撰組ではそれなりの扱いを受けている。納得が行かぬな。」
月を見上げる蛍。月は振り替えろうとはしない。
「生まれが長州でも、戦いには関係ありませんので。」
あくまで戦いのために新撰組にいるいうことにする。
それでも蛍は納得しない。
「女のくせに戦いに身を置くとは大したものだな。」