白い金の輪


 伯母の家に身を寄せてしばらく経った頃、伯母が縁談を持ちかけてきた。
 相手は近所に住む若者だという。

 体のいい厄介払いだと思った。

 嫌なら断ってもいいと言われたが、居候の私に断る権利はない。

 言われるままに見合いをし、その後何度か二人で会った。

 未だに彼への未練を引きずっている私は、どうしても彼と比べてしまう。

 近所の山で木こりをしているその人は、日焼けして荒れた肌が手も顔も傷だらけ。
 おまけに無愛想で口べたなため、話しても会話が続かない。

 華やかな町で客商売をしている社交的な彼に比べて、かなり見劣りした。

 真面目で実直、それだけが取り柄のつまらない男。
 けれど何も持たない私には、お似合いかもしれない。

 現実はこんなものだ。
 彼と過ごした日々が、一時の夢だったのだ。
 農家の三男坊が、木こりの若者に変わっただけだ。

 諦め気分の私が嫌な顔もせず、誘われるままにその人と何度も出かけているうちに、とんとん拍子に話は進んだ。

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