赤き月の調べ
最高のセキュリティ会社に加入しているのと、警備員が常にいることで安全は守られている。
希空は従業員入口から入り、マジックミラーの前で止まると、引き出しに従業員カードを置いて閉める。
すると、ごそごそと物音の後に、マジックミラーを叩く音がして、希空は引き出しを開けた。
中には、レジの鍵と小銭とお札の入ったポーチが出てきた。
「ありがとうございます」
「……」
受け取りながらそう言っても、一言も返ってこない。
いつもの事だから、希空も気にならなくなったけど、はじめての時には少し怖かった。
ただ、一つ変わっていないのは、いまだに相手の顔を知らない事だ。