赤き月の調べ
受話器の向こうからは、小さなため息が聞こえてきた。
「……大きい割に、軽い荷物なんだけど」
「そこじゃない」
「希空へのプレゼントだよって、言ったのよ!」
「なに言ってんの? プレゼントってなに?」
受話器を投げつけて壊してしまいたい衝動と戦うのは、かなりの理性をかき集めなければならなかった。
「まあまあ、落ち着きなよ」
希空の気持ちなどお構いなしに、リマは悪びれた様子もない。
「明日がなんの日かわかる?」
「明日? 別にカレンダーには、なにも書いてないけど」
電話の横に置かれたカレンダーを見てみるが、特に書き込まれていない。
国民の祝日でもない。