赤き月の調べ


「やっぱり、気にしてないのね」


 誕生日や記念日を忘れた恋人を責めるような言い方をされて、希空は自分が悪いことをしたって気分になった。


 罪悪感なんて、感じる必要はないはずなのに。


「明日は、店の開店一周年でしょ? だから店は休み。会員を招待して一周年記念のパーティーを開くのよ。そうとなれば……必然的にワンピースが必要になるでしょ?」


「ちょっと待って。どうして、あたしまで出席することが前提の話になってるの?


 誕生日パーティーやハロウィン、クリスマスパーティーをするのは、希空の中ではお金持ちの特権と認識されている。


 つまりは、庶民の希空には無縁の話だ。


 店を休業することはない。


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