赤き月の調べ
「思うんだけど、リマ。パーティーに出席するのは、あなたと社長だけで、あたしは行かずに店を通常営業すればいいんじゃない?」
人のたくさん来るような場所に行きたくなくて、希空は必死に説得しようとした。
けれど、受話器の向こうから聞こえてくるのは、痛いくらいの沈黙だけだ。
「もしもし? リマ、聞いてるの?」
電話を切られてしまったのかと不安になりながら聞くと、深いため息が聞こえた。
それだけで、電話の向こうで眼鏡を外して目頭を揉みほぐすリマの姿が思い浮かぶ。
このため息の吐きかたは、苛立っているかも。
長くなりそうな電話を覚悟して、希空はテーブルに両肘をついた。
ペンとメモは、すでに放棄している。
相手がリマである以上は、メモをとる必要はないから。