赤き月の調べ



 そもそも、レンが悪い。


 自分で取りに行けばいいものを、約束があると言って朔夜に頼んだのだ。


 今も囁き続ける店内に戻りたいという欲求と戦い、朔夜は自分の本能に逆らいながら立ち上がった。


 重い足取りで車に辿り着くと、助手席に向かって本を投げる。


 それだけでは苛立ちは収まらず、車のエンジンをかけるなり一気にアクセルを踏み込もうとした。


 車で一気に夜の街を走り抜ければ、さぞかし気が晴れるだろう。


 朔夜は、一度アクセルから足を離して落ち着こうとした。


 車の事故くらいでは死なない身だとしても、正体を隠して過ごすには、事故を起こして無傷で警察の事情聴取を受ける訳にはいかない。


 ましてや、薬物検査や飲酒検査を受けたら、自分の体から何が見つかるか分かったもんじゃない。


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