赤き月の調べ
[四]
希空が気を失ってくれて、朔夜はほっとした。
自分の正体を知られたくない。彼女に悲鳴を上げて、化け物を見るような目を向けられたら耐えられる自信がなかった。
辺りには希空の血の香りが漂い、汚らわしい吸血鬼のクズが彼女に触れている状況に、喉から唸り声が漏れた。
「なんだ、てめぇ! 邪魔すんじゃねえよ」
「お前ら、そいつの相手をしてやれ。この女は、俺が始末する」
最下層にも等しい吸血鬼は、朔夜が何者かを知らないらしい。
「お前らこそ……死にたいのか?」
「はぁ? 後から出てきて何様だよ!」
「お前らみたいな馬鹿に、いちいち説明してられるか」
馬鹿みたいにな会話に付き合いきれず、目の前の二人を無視してもう一人の男に音もなく近づくと、素早く希空を抱き寄せて攻撃の隙を与えず男の首をナイフで傷つけた。