赤き月の調べ


 朔夜は希空を横抱きに抱えると近くの低い塀に座らせ、首の傷を押さえると電話に出た。


「もしもし、希空? 狼さんから電話があったから、何度も電話したのよ?」


「悪いが、彼女は今出られない」


 朔夜が言うと、電話の向こうが背筋が寒くなるほど静かになった。二百年ほど生きている吸血鬼に、そう思わせるのだからかなりのものだ。


 次に相手が口を開いた時には、明らかな警戒と敵意が込められていた。


「あんた、希空に何かしたの? まさか、傷つけたんじゃないでしょうね」


「申し訳ないが、怪我をさせたのは俺じゃない」


「それを決めるのは、あんたじゃない。今……どこにいるの?」


 電話越しにエンジンの音が聞こえてくる。すでに向かっているのだろう。


 相手が誰にしろ、顔を合わせる訳にはいかない。


< 42 / 43 >

この作品をシェア

pagetop