赤き月の調べ
朔夜は希空を横抱きに抱えると近くの低い塀に座らせ、首の傷を押さえると電話に出た。
「もしもし、希空? 狼さんから電話があったから、何度も電話したのよ?」
「悪いが、彼女は今出られない」
朔夜が言うと、電話の向こうが背筋が寒くなるほど静かになった。二百年ほど生きている吸血鬼に、そう思わせるのだからかなりのものだ。
次に相手が口を開いた時には、明らかな警戒と敵意が込められていた。
「あんた、希空に何かしたの? まさか、傷つけたんじゃないでしょうね」
「申し訳ないが、怪我をさせたのは俺じゃない」
「それを決めるのは、あんたじゃない。今……どこにいるの?」
電話越しにエンジンの音が聞こえてくる。すでに向かっているのだろう。
相手が誰にしろ、顔を合わせる訳にはいかない。