甘い蜜
「飲みたりないみたいだし…智也が」
小さく呟く翔琉。
「え?お前飲みたりないの?」
智也はすかさず食いつき、焼酎のボトルを片手に持つ。
あたしと凛は、それを見てまた笑った。
理由が何であれ、延長してくれた。
あたしはまだ、ここにいていいようだ。
安心して、カクテルを一口飲んだ。
その後ゲームの続きをして、翔琉は負け続けた。
そのたび、あたしは翔琉と自然に話すことができた。
でもそれは、凛と智哉のおかげ。
翔琉と二人きりだとしたら、きっと何を話していいのかわからなかった。
翔琉の冷たい態度に、新人を思わせるような接客しかできなかったから。
NO1キャバ嬢が聞いて呆れる。
「翔琉の負けー!」
凛の声に、あたしは我にかえった。
見ると、また負けたのは翔琉。
「本当、弱いんだね」
あたしは笑いながら、焼酎のロックを手渡した。
「…うるせ」
翔琉は小さく呟いて、一気に飲み干した。