noir papillon
「へ……?な、ちょっ……」
半壊状態の町並みに動揺するハルは言葉も出ない。
「問題無い。住民は既に避難させておいた。皆無事だ」
前方の柴架を睨むカナメの言葉にホッと安心するが、安心などしてはいられない。
自分の身に危険が迫っているのだ。
気を抜けば、迫り来るは死あるのみ。
ゴクリと息を呑み顔を上げると、周りの景色が一瞬にして変わりゆく。
崩れたビルに廃墟と化した教会。
面影も何もない学園に燃え尽きた病院。
其処で暮らす者など誰一人として居ない滅んだ町へと転移したハル達。
いくら暴れても一般人の犠牲者は出る事は無いし、建物を壊そうが何の責任も負う事も無い。
それを考慮しこの場を選んだのだろう。
「何処かと思えば以前私が滅ぼした町の1つか。別に場所を変えなくとも良かったのに。いずれあの町も滅ぼすのだから」
「くっ……」
町を眺め口にする言葉。
柴架はニヤリと笑い全員の批判を買う。