noir papillon
フッと吹いた爽やかな風。
木の葉を揺らし髪を揺らし、頬を掠めたそれを身に、ハルは深く重い息を吐く。
「見てのとおり俺は戦力外。戦いに参加したとしても、ものの数秒でknockout。それが分かっているのに何故俺を戦闘の一員として考えるんだよ?」
正直彼、ハルは数日後に待ち受ける戦いに参加する事を望んでなどいない。
生死を賭けた戦いなのだから、自らの意志で決めろとカナメ本人が言っていた。
なのに彼はハルの意志など一切訊く事無く、早朝から此処に連れてきて戦いの指導をしているのだ。
自ら言葉で否定できないのなら、このどうしようもない戦闘能力を目に彼から諦めの言葉がでるのを期待していたのだが、どんな哀れな姿を目に見せようが全く諦める様子は無い。
「柴架を倒すには、君達5人の力が必要なんだよ。誰一人として欠けてもらっては困る訳」
「だったら何であんな事言ったんだよ」
「う~ん…言葉の綾だね」
何の悪気も無く言う彼にハルは冷めた眼差しを向けるのだった。