noir papillon
カナメからの容赦ない扱きを受けたハルは深く重い溜め息を吐きながら喫茶店soleilの扉を開く。
店の中からは珠里奈の明るい声。
顔を覗かせた彼女はにこりと柔らかく微笑んだ。
「お疲れ様」
疲れ果てた顔をしたハルに飲み物を差し出す彼女。
ハルはそれを受け取り口に含む。
「あれ?皆は?」
コップ一杯のそれを飲み干したハルは店に誰も居ない事に疑問を抱く。
夜も更け客は居ないのは当たり前なのだが、何時もならシンリ達の姿が必ずと言っていい程ある筈なのに今日に限っては誰一人として其処に居ない。
「さぁ。皆今朝から様子がおかしかったし、何処に行ったかは分からないわ 」
「…そっか……」
こんな夜遅くに何処に行ったのだろう。
思いつくのは、皆それぞれ来たる決戦の日に向けての精進する姿。
魔力を磨く皆の姿が頭を過ぎるが、どっと押し寄せた睡魔には勝てず、ハルは自室へと歩を進めベッドに倒れ込んだ。