noir papillon
「さてと、朝食も終えた事だしそろそろ行こうかハル」
口をもごもごさせるハルの襟足を引っ張り店から連れ出すカナメ。
彼は上機嫌だが、一方のハルは正反対。
不機嫌この上ない彼は引きずられながら外へ出る。
「おいカナメ、ちょっといいか?」
「ん?」
眩い日差しに目を細めていると、背後から呼び止められたカナメ。
振り返ると、真剣な面持ちのシンリの姿。
何時もなら既に酔っている筈なのに、まだ素の状態とは珍しい。
「その特訓、私も付き合わせて貰いたいんだが」
「へ?」
彼女の言葉に驚くのはカナメでなくハル。
彼のハードな特訓に自ら希望してくるなんて命知らずにも程があると。
「認めたくはないが、お前は私が知る誰よりも強い。お前からなら、私はもっと強い魔法を得られると思うんだ。だから、頼む」
頭を下げるなんて彼女らしくもない。
だけど、彼女は本気なのだという事が理解できる。
「どうしよっかな~」
肯定の言葉を聞くまで顔を上げないシンリを見下ろすカナメは腕を組む。
「頼みますよカナメ。僕達が頼れるのは貴方しか居ないんです」
「私もお願いしたい。強くなりたいんだ」
「頼むのだ、カナメ」
何時の間にか集まったタクミ、ミヤビ、リッカ。
3人もまたシンリと同じく頭を下げた。