不誠実な恋
一気に三階まで駆け上がり、エスカレーターから一番遠い別館へと繋がる通路の手前にあるトイレを目的地にフロアを突き進む。
「メイっ!」
案の定、美弥の腕に抱えられるように凭れ込んでいた女の姿は、俺が一時間近く探し回っていた待ち人で。
呼ばれた名が違うことに訝しげに眉を寄せる美弥を宥めるより先に、蒼白い顔をして蹲る美雨を抱き締めるために腕が伸びた。
「どないしたん?大丈夫か?」
「ゆう…し」
「調子悪いんやったら無理せんとホテルで寝てたら良かったのに」
「いや…さっきまで元気やったんよ」
「病院行くか?それともホテル戻る?」
頼り無く押し出される声が決して忘れることの出来ないあの日の記憶と重なって、襲ってくる頭痛を眉を寄せることで何とか取り逃がそうとしていた。
そんな俺の顔を見上げ、未だ赤みの差す気配もない美雨の表情が急激に曇って行く。
気絶でもしてしまうのではないだろうか。と、抱き締める腕に更に力を込めた。
「侑士…ごめん」
「何を謝っとんねん。美雨は何も悪いことなんかしとらへんやん」
「したよ、悪いこと」
「何をしたん?倒れるほど気にするようなことなんか?」
悪いことと一括りにしても、それはピンからキリまで様々。
些細なことでも気にし過ぎてしまう節のある美雨だから、俺にしてみれば大した問題ではない。
そう決めてかかって、にっこりと思いつく限り優しい笑みを浮かべて乱れた髪を直すかのように撫でた。
「メイっ!」
案の定、美弥の腕に抱えられるように凭れ込んでいた女の姿は、俺が一時間近く探し回っていた待ち人で。
呼ばれた名が違うことに訝しげに眉を寄せる美弥を宥めるより先に、蒼白い顔をして蹲る美雨を抱き締めるために腕が伸びた。
「どないしたん?大丈夫か?」
「ゆう…し」
「調子悪いんやったら無理せんとホテルで寝てたら良かったのに」
「いや…さっきまで元気やったんよ」
「病院行くか?それともホテル戻る?」
頼り無く押し出される声が決して忘れることの出来ないあの日の記憶と重なって、襲ってくる頭痛を眉を寄せることで何とか取り逃がそうとしていた。
そんな俺の顔を見上げ、未だ赤みの差す気配もない美雨の表情が急激に曇って行く。
気絶でもしてしまうのではないだろうか。と、抱き締める腕に更に力を込めた。
「侑士…ごめん」
「何を謝っとんねん。美雨は何も悪いことなんかしとらへんやん」
「したよ、悪いこと」
「何をしたん?倒れるほど気にするようなことなんか?」
悪いことと一括りにしても、それはピンからキリまで様々。
些細なことでも気にし過ぎてしまう節のある美雨だから、俺にしてみれば大した問題ではない。
そう決めてかかって、にっこりと思いつく限り優しい笑みを浮かべて乱れた髪を直すかのように撫でた。