猫 の 帰 る 城
笠原さんとの付き合いも、その頃からだ。
この世界に入ったときから、つまり、これもまた、ちょうど二年になる。
誰もが口を揃えて優秀な人材だと言う彼女が、自らわたしの担当を懇願したことは、のちに知った。
一目惚れだったんだからと、誇らしげに笑う姿を見て、こちらも自然と笑みが零れた。
嬉しさと恥ずかしさに混じって、責任にも似た強い挑戦心が生まれたのを覚えている。
言葉通り、彼女は実に優秀だった。
ひとつひとつ、上らせる階段の選択が、実に見事なのだ。
それはわたしの意識を向上させるとともに、どういった方式が、どのように世の注目を集めるかという点でも、人々を唸らせるものがあった。
ときには、世の評価やイメージをうまく壊して、大胆なステップを用意してくれたりする。
彼女の役割は大きかった。
彼のことは、多くは語っていない。
初めの頃、少しの眠りでも頻繁にうなされるわたしを心配した彼女に、ひどい別れ方をした人がいると言ったきり。
あとは語らなかった。
長い間、前に進めずにいることも、それの果てしなさを恐れていることも。
過去から抜け出せない自分を、誰かに開放することは、そんなに簡単なことではないのだ。
それでも、それとなくは察しがついているようだった。
察していても、何も言わない。
忘れろだとか、苦しいねだとか、同情をただ言葉にするのではなく、心を並べて、わたしの葛藤を自分のことのように見てくれる。
それがとても有難かった。
わたしに目一杯の期待をかけてくれる人がいる。
期待に応えたいと、強く思えた。
そう思えるものがあることもまた、ここで生きている活力になっていた。