猫 の 帰 る 城





五限目が終わると僕はすぐに講義室を出た。

外の世界は雨が降り続いていた。
午後のティータイムよりも雨足は強まってきている。
顔をあげると、冴えない空にどんよりとした雲が構えていた。


不穏な天気だ。


小夜子のうちへは大学から歩いて約五分。
正門を出るとケータイを起動させた。
真優にメールを送ってからそのまま電源を落としていたのだ。


今から行くと小夜子に電話しようとしたその時、突然着信画面に変わった。
僕は驚いて立ち止まってしまった。

立ち止まって、手の中で震えるそれを見つめた。

画面に浮かぶ名前は、いま最も見たくない名前。




河口真優









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