聴かせて、天辺の青
しばらくして、事務所のドアが開く音が聴こえてきた。続いて、河村さんの声。
「瑞香ちゃん、藤本君、ちょっといい?」
振り向くと、彼を引き連れてやってくる。晴れやかな顔から、河村さんが何を言いたいのかすぐにわかった。
「こちらは海棠宏樹さん、今日から働いてもらうことにしたからよろしくね。藤本君、彼に仕事教えてあげてね」
「海棠です、よろしくお願いします」
海斗の顔が強張ってるのを察したのか、彼が先に頭を下げた。だけど、いつもの無表情のまま。印象はあまり良くないかもしれない。
「藤本です、よろしく」
ためらいつつ海斗も軽く頭を下げる。そんな海斗を見て、河村さんが安心したように目を細めた。
「シフトは瑞香ちゃんに合わせておくわね、一緒に来て一緒に帰るでしょう?」
私に尋ねているのか、彼に尋ねているのかわからなくて戸惑っていると、
「ね、二人ともいい?」
と河村さんが言う。
「はい、お願いします」
答えたら、彼と声が重なって恥ずかしかった。