聴かせて、天辺の青


しばらくして、事務所のドアが開く音が聴こえてきた。続いて、河村さんの声。


「瑞香ちゃん、藤本君、ちょっといい?」


振り向くと、彼を引き連れてやってくる。晴れやかな顔から、河村さんが何を言いたいのかすぐにわかった。


「こちらは海棠宏樹さん、今日から働いてもらうことにしたからよろしくね。藤本君、彼に仕事教えてあげてね」

「海棠です、よろしくお願いします」


海斗の顔が強張ってるのを察したのか、彼が先に頭を下げた。だけど、いつもの無表情のまま。印象はあまり良くないかもしれない。


「藤本です、よろしく」


ためらいつつ海斗も軽く頭を下げる。そんな海斗を見て、河村さんが安心したように目を細めた。


「シフトは瑞香ちゃんに合わせておくわね、一緒に来て一緒に帰るでしょう?」


私に尋ねているのか、彼に尋ねているのかわからなくて戸惑っていると、


「ね、二人ともいい?」


と河村さんが言う。


「はい、お願いします」


答えたら、彼と声が重なって恥ずかしかった。



< 100 / 437 >

この作品をシェア

pagetop