聴かせて、天辺の青


ふいっと目を逸らした。


「はいはい、わかってる。何もないようにするから」

「何もないようにって、そうじゃないだろ? お前わかってないなあ……」


海斗がイライラしてるのがわかる。これ以上余計なことを言うのはやめて、話題を逸らさねば。


「ねえ、それより今日は早い出社だったんだね」

「ああ、たまたま早く家出たら、道が空いてたから早く着いたんだ」


さらっと答えるけど、目を合わせようとしない。やっぱり何か変。


きっと何か隠してる。


どうして倉庫の扉が閉まってたの? って、尋ねたい気持ちがうずうずしてくる。


「今日、道空いてたかなあ……」


海斗が振り向いて、口を尖らせる。余計なことを聞くなと言いたげな顔が、ますます怪しい。


「ああ、空いてた。それより、くれぐれも気をつけろよな、何かあったら、すぐに俺に言うんだぞ」


きつい口調で海斗は、私の口に蓋をした。うまく話題を変えられたかも……


だけど口調に反して、海斗の顔は少し寂しそうにも見えた。




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