聴かせて、天辺の青


どうやって行くかなんて考えてなかったんだろう。彼は戸惑った様子で私を振り向いた。


「自転車?」


と尋ねるけど、自転車で行くには少し遠い。私は首を振って返した。


まったく、海斗は意地悪なことを聞いてくれるんだから困る。本当は私と一緒に車で行くとわかってるくせに。


「海棠さんも私と一緒に行くよ、海斗はどうするの? よかったら一緒に行く?」

「いや、いいよ。俺はココ閉めてから行くから」


好意で言ってあげてるのに断るなんて失礼な……と思いつつも、疑問が浮かんだ。


「あれ? 海斗、明日は早番じゃなかった?」

「ああ、午前中に用事が出来たから遅番にしてもらったんだ。だから、いいよ」


「足は? 誰かに乗せてもらえるの? 飲むなら帰りは乗ってく?」

「大丈夫、おっちゃんと二次会行くかもしれないから。ありがとうな」

「そう、わかった。じゃあ現地でね」


きっぱりと断るなら仕方ない。
海斗はお酒をよく飲むから、自分で車を運転しないのか心配なだけ。


「海棠さんは飲めるの?」


ふいに海斗が尋ねた。
私たちの会話を黙って聞いていた彼は首を傾げて、


「うん、まあ普通に」


と小さく答える。
海斗は勝ったと言いたげに、にこりと笑った。



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